ワックスメーキングとは?
ジュエリーの製作方法には様々なバリエーションの技術や技法がありますが、その中でも比較的に設備投資が少なく気軽に始める事ができる製作方法がワックスメーキングと呼ばれる方法になります。
ワックスとは蝋燭のロウのような素材で融点や粘度や硬さの違う様々なタイプの形状と特性を持った素材ですが、もっとも硬いハードワックスでも爪で傷が付く程度の硬さなので成形作業が容易で多少の失敗をしてもワックス自体の融点が低い事からワックス端材等を溶かして盛り直したり、破損した部分の溶着をする事ができます。
ワックスメーキングには大きく2つの系統があり、ソフトワックスと呼ばれる体温で柔らくなり、強く触れると指紋が付くような非常に融点の低いシート状のワックスを使う方法では、融点の低さを活かした盛り付けによる造形や花びらのような繊細なモチーフの造形に適している事から主に植物等をモチーフにしたジュエリーを製作するのに向いています。
次にハードワックスと呼ばれる容易に切削や研磨ができる硬さと融点を持ったチューブ状や板状のワックスを使う方法となり、こちらは一般的なワックスメーキングの代表的な手法となり、その扱い易さと自由性の高い造形性は幅広いデザインのジュエリー製作に用いられています。
ロストワックスとは?
ワックスで製作した作品をシルバーやゴールド等の貴金属地金に吹き変える作業の事をロストワックスや鋳造と呼びます。
この工程は専用の設備と経験が必要になる事から専門の業者に依頼する事が多くなりますが、作業工程としてはワックスに湯道と呼ばれる熔解した貴金属地金の流し込み口となる部分を溶着し、湯道が飛び出るように石膏に埋没して焼成します。
石膏は焼成する事で硬化し、埋没したワックスは逆に熔解し蒸発する為、石膏にワックスで造形した作品の空洞が残ります。その空洞に湯道から熔解した貴金属地金を流し込み、その後、石膏を破砕するとワックスと同じ形の貴金属地金に吹き変えられた作品となります。こうした工程を経て、ワックスで製作した作品が貴金属になり、それを仕上げ作業や石留め作業をして綺麗なジュエリーとして完成させます。
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ワックスメーキングに必要な道具類
ワックスメーキングの最大のメリットは製作するのに必要な工具類が少なく、誰でも手軽に始められる事ですが、さらにワックスメーキングの段階で失敗してもその時点では貴金属地金を使用していない為、リスクが少ない点も挙げられます。
ここで紹介する道具類は一般的な道具が中心ですが、切削加工が容易な事から多くの彫金師さんは自身の製作するジュエリーのデザインに適したオリジナルの道具を製作して使っています。自由度の高さとオリジナル性の出し易さや設備投資が少なくて済む事から地金メーキングよりもハードルが低いものの最終的には貴金属地金になったものを仕上げや石留めをする必要もあり、テクニックの幅も多いことから技術的な優越が分かり易いので、その意味では奥の深い製作方法なんですね。
ちゅ~ような感じで、これがないとちょっと厳しい、いくら食材があっても調理器具が何にもないんじゃ料理はできないって感じで必要最低限の主にハードワックス用の道具類を紹介しますね。
ノギス
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このノギスという計測道具はワックスメーキングに限らず、ある程度の精密性が求められるジュエリー製作には必需品なので登場しちゃったのです。厚みを計ったり、中心線や中心点を見極めたり、これがないと何もできないくらい様々な工程で必要になってくるので、目盛りを見るのが・・・って人はデジタルタイプでもいいから持ってた方がいいですよ。
ワックス用のノコ
ワックスの中でも融点の低いソフトワックスの場合はデザインカッター等で切断しますが、ハードワックスの場合は程々の硬さがあるので専用のノコを使います。
ちゅ~てもノコ弓は彫金用の専用仕様であれば何でも大丈夫なので、重要なのはノコ刃なんですけどね。大きなブロック状の塊りを切り出す場合は、もうホームセンターとか売っているピラニアソーみたいな薄刃でコンパクトな鋸が使い易いです。
ワックス用のノコ刃
ソフトワックスに比べれば高い融点とはいってもワックスの融点は低い為、通常のノコ刃を使うと摩擦熱で切断したそばから溶着してしまう為、このような螺旋状になった専用のノコ刃を使います。
この螺旋状のノコ刃の特徴は前後左右の全ての方向に向かって切断できる事ですが、ノコ刃にも太さの種類があり、太い程にサクサクと切れる反面、あ、やっちゃった・・・ってなり易いのです。切断するのがワックスなのでノコ刃は滅多に折れたりしませんが、ノコ刃が細くなる程に歪みが生じ易く、折れなくても寿命かなぁ・・・ってタイミングを感じます。
リーマー
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チューブ状になったリング用のハードワックスの場合、穴の大きさが決まっているので希望のリングサイズにする為にリーマーという専用のチューブの穴を大きくする道具を使います。
ポイントは斜めらないように中心を意識してチューブワックスの穴に突っ込んでぐりぐりと回しながら穴のサイズを大きくする訳ですが、あまり力を入れると綺麗な真円にならず凸凹しちゃうので優しく回す事です。回転させる方向は時計方向となり、穴のこちら側から数回ばかりぐりぐりしたら、反対側からも同じようにぐりぐりして、チューブワックスのこちら側と向こう側で穴の大きさが違うじゃん・・・って事にならないように注意しましょう。
リーマー(正面から見た感じ)
リーマーを正面から見ると写真のように角度の付いた刃が六角あります。
先端から持ち手の方に向かって徐々に径が太くなったテーパーが付いているので、ぐりぐりする程に穴が大きくなっていきます。あまり力を入れてぐりぐりすると凸凹の穴になってしまうのは、このように六角の角度の付いた刃で削っているからなんですね。
ワックス用のヤスリ
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ワックスメーキングで使用するヤスリは金属等を削るヤスリのような目の細かいタイプだと摩擦熱で削ったワックスが溶着しちゃって削れないので、ワックス専用のヤスリか塩ビ等を削るヤスリが使われます。
手前のオレンジの持ち手と真ん中のグリーンの持ち手のヤスリは同じくらいの目の粗さで、グリーンの方は専用ヤスリですが、オレンジの方はハンズかどっかで買った塩ビ用だったような・・・。奥の銀色をしたヤスリは目の細かい専用ヤスリとなり、粗い目のヤスリは造形、細かい目のヤスリは粗い目のヤスリのキズを消すような感じで使うんだよ。
ワックス用のヤスリ(拡大画像)
大雑把に形を出す時は力強く、いい感じのところまで削ったら、同じヤスリでも力加減を弱くして優しく削る事でワックスに付いたヤスリのキズが浅くなります。大胆且つ繊細っていうか、経験っていうか慣れなんですが、細かい目のヤスリになる程にヤスリの目にワックスが詰まるので歯ブラシみたいなので掃除しながら使います。
スパチュラとかキサゲ
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スパチュラやキサゲはワックスの表面に付いたヤスリのキズを落としたり、柄模様を彫ったり、窪みを作ったりする時に使う道具となり、手前のオレンジの持ち手をしたのがキサゲと呼ばれる道具で奥の銀色をした2本がスパチュラになります。
スパチュラには様々な形状やサイズの種類があり、スパチュラが使い易いと感じる方だったら好みのタイプを探してみるのもいいかもしれません。キサゲは本来は貴金属地金に使う道具なのですが、万能的な道具なのでキサゲしか使わない人もいたりします。こうした装飾加工や表面仕上げの為の道具も好みに合わせて自作したオリジナルのものを使っている人も多いんだよ。
スパチュラとかキサゲの先端
ワックスメーキングに関しては、あまり切れ味や鋭さは重視する必要がありませんが、できる事が形状とサイズによって限られる事から、特にスパチュラは種類が多いのです。
ちゅ~のもスパチュラに限らず、ワックスメーキングやロストワックスという技術自体が歯科業界と同じか似た部分があり、その道具類も共通のものが少なくありません。スパチュラはスパーテルとも呼ばれる医療でも使用される道具なので形状や大きさのバリエーションが豊富なんだよ。
ワックスペン
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ここからは絶対に必要ではないもののあると便利、作業時間の短縮や精度の向上に結び付く感じの道具類です。
ワックスペンはヒートペンと呼ばれる事もあるペンシルタイプの温度調節のできる小型のハンダみたいな道具になります。先端は異なる形状やサイズのものに自由にチェンジできるようになっており、部分的な修正作業から本格的な盛り付け技法まで融点の低いワックスならではの加工作業ができます。
リューター
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こちらのリューターも特にワックス専用の道具ではなく地金メーキングまで対応したオールマイティな彫金道具のひとつです。
精度や性能によって非常に高価な機種から比較的に初心者向けの機種まで様々なタイプがありますが、こうした精密機械は値段と精度や性能が比例するので、リーズナブルな機種はそれなりの性能となっちゃいます。リューターのハンドピースと呼ばれる手で持つ部分の先端が回転するようになっており、そこに様々なツールを付け替える事でオールマイティな作業や加工ができるようになっています。ワックスメーキングだけに限定するなら高トルクや高速回転や逆回転といった機能は必要がないので、そこそこの機種でそこそこ役立ちますよ。
リューターの先端ツール
20本セット タングステン リューター ビット 研削ヘッドカッター (3mm軸 刃幅3mm)
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オールマイティに幅広い用途で使用できるリューターには様々な先端ツールがライナップされていますが、ワックスメーキングで主に使用するのは画像の3種類で太さや大きさの違った同形状のタイプが何種類かあれば十分だと思いますよ。
主に窪みを作る為でスパチュラでは時間が掛かり均一な状態にするのが大変な作業が効率的におこなえます。但し、リューターはワックスメーキングの中でもハードワックスにしか使用しない為、融点の低いソフトワックスには使えない事からワックスメーキングの中でもソフトワックスをされる方は、今回、登場した道具類の中でスパチュラとワックスペンしか必要ありません。
ちゅ~ような感じで、ワックスメーキングに使う主な道具類でしたが、次回はちょっとリングの製作工程でも紹介しますね。
ち~ゆ~。
ΘεΘ
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