前回に引き続き、今回は糸ノコワークで作る透し模様のピアスをご紹介致します。
糸ノコの基本的な使用法は前回の記事を参照なさってみて下さい。
右側の板は「すり板」、左の満身創痍はすり板を固定する「あて木」、手前の金属は「かすがい」というもので、彫金には必ず必要なものです。
大抵のネジ山は捻じ切る星の下に生まれました。
では、セットしますよ。すり板にあて木を噛ませて木槌で打ち込みます。
すり板はホオ材とカシ材の2種類がありますが(私が知らないだけで他にもあったらごめんなさい)使い分けとしてはホオは柔らかい材質なので通常の彫金作業全般、カシは硬いのでヘラがけ等強い力が掛かる作業向けです。
切り込みの意味はノコ刃を通したり、リングや安定の悪いモチーフを支え易くして作業したりする為のもので、購入時は長ーーーーーーーーいかまぼこ板みたいなただの板です。なので、自分で具合の良いように切ったり角を落としたり、とカスタマイズしますよ。最初から切り込みの入っているすり板もありますが、そんなに難しいものでも無いので、前述した長いかまぼこ板状のすり板を購入してサクサクっと切ってしまえば良いんじゃないかなぁ、と、個人的には思います。その辺りはお好みでどうぞ。あて木は特に材質に拘らず、手近にある板で問題ありません。
型紙を貼った銀板を用意。型紙は液体タイプの糊を板の方に塗りますが(紙に塗ると型紙が伸びてしまいます)、完全に乾くまで放置するとノコを引いている間に型紙が剥がれてしまう事があるので、”ちょい生乾きかしら?”位で切り始めると良いかと思います。
複数の型紙を貼る場合は資材の無駄を出さない様になるべく寄せて貼りますが、ノコ刃の太さの分板が削り落とされるので、型紙のアウトラインに影響しない範囲と、使用するノコ刃の幅を考え合わせた距離を開けて貼ると良いです。どの大きさの刃を使うかで変わってきますが、3/0程度なら1mmも開ければ良いと思いますよ。
穴あけ作業でドリルの刃が滑らない様に動線となる凹みを付けておきます。抜く部分が小さい場合は特に刃が滑ると致命傷になるので、この作業は必ずしましょう。先の潰れていない釘を使うと良いですよ。そしてもう一点、付けた凹みに蝋等、潤滑剤になるものを塗っておきます。
私が穴あけに10年以上使用しているのはこちら。モチーフに対して垂直に立てて使い易いのと力の入れ易さで、もうずっと愛用しています。残念ながら廃盤なので、壊れると部品作りが趣味の工務店の人に修理してもらいます。でも万が一の時の為に代替品を買っとかないと・・・・と思いながら幾年月。
これに限らず、工具や彫金道具は気付いたら廃盤になっている事が多いので、「出会ってしまった・・・」と思ったら邪魔にならない程度に、家族に白い目で見られない程度のまとめ買いをする事をおススメします。
穴あけに使用している刃の径は今回は0.8mmです。
6/0で切って行きますが、ここで注意点。模様が細かいものを切っていく時は「切る」ではなく「撫でる」感じでお願いします。感覚を掴むには「部屋と彫金とわたし」(若い人分からないよ)な日々を時間を見つけては過ごすとこう・・・・いつの間にか「あれ?もしかして私出来てる・・・・?」となる日が来ると思いますので焦らず、慌てず、地味な基礎を地味に続けて地道に上達しましょう。
一番最初に作ったものを取っておいて、暫く練習を続けた後、また同じものを作ってみると上達が目に見えて楽しいかも知れません。
※透かし模様を切って行く時の注意点/デザインを損なわない様に模様を抜く時は引いた線の内側、アウトラインを切る時は線の外側を切る様にして下さい。
今から切っていく場所の先端はピシっと尖らせたいので、それについて説明しますね。
図の様に、先ず一刀目は普通に切る→先端まで切ったら一度刃を抜く→反対側を切る
この順番になります。先端に刃をやる時はそっと優しく切って行って、丁度の所でピタッと止めましょう。初めは多分うまく行かない(型紙からはみ出してしまったり、先端が交差したり、線が交わらず二手に分かれてしまったり等)と思いますが、練習すれば出来る様になります。切り抜いた後、頂点にノコ刃を当てて撫でる様に軽く2回程引くと、より尖った感じになりますよ。
こんな感じに。
輪郭も抜いていきます。
花と鳥が出て来ました。
結構小さいです。鳥の方は大体10mm×20mm。
さて、ここでもう一つ注意点。
ノコを引く時、使用する板や線が厚ければ厚い程切断面にその人の癖が出ます。大体1mm位から目に見えて顕著になって行くと思いますが、図の様に言わずもがな理想は一番左。ですが、自分では真っ直ぐ刃を立てているつもりでも真ん中、右の様になってしまう事があると思います。
そういう場合は平衡感覚を鍛えるとか、体の歪みを矯正するとか、ぶらり修行の旅に出るのもいいかもしれませんが、単純に自分の癖を理解した上で”自分が真っ直ぐと思っているより外側(または内側)を切る”という風にすればいいのではないかなぁと思います。ご参考までにどうぞ。
では先程切ったモチーフにヤスリをかけて形を整えていきます。ヤスリは使用する金属別、プラチナ、金、銀、真鍮、それぞれに専用の物を使用しましょう。これは主に金属別に削りかすを集めて(真鍮除く)吹伸(ふきのべ)をする時の為ですが、吹伸しないという方でも意外と金属かすというのは貯まるので、一度お試しでやってみるといいかも知れないですよ。
吹伸はご自宅でやられる方もいらっしゃいますが、粉の場合は地金の純度を保つ為に分析、抽出した方が良いので、一度皿チョコやルツボで一塊に溶かしてから彫金専門店でリサイクルOKの業者さんに頼むと良いと思います。※溶かす前に磁石を当てる、溶かしながら浮いてきた膜を取り除く、の2点はしておいた方が良いです。
ヤスリをかけてバリ取りをした所です。因みにバリとは切ったりやすったりした時に切断面に出る金属のめくれの事です。
バリはヤスリで落とすか「キサゲ」というもので取ります。キサゲは切れ味が不可欠、小刀の様な役割りをしますので、自分で研ぐ必要があります。
写真はキサゲの持ち方。右で持とうとしたらゲシュタルト崩壊を起こしてしまって、最終的に何故か鉛筆持ちになり、机の前で途方に暮れてしまったので、右利きの方は画像を参考に右手持ちを想像して頂けると助かります。
ポストをロウ付け。ここで使用しているロウは2分ですが、5分でも問題ありません。
ロウの種類やロウ付けについては近いうちににご説明させて頂きます。
酸洗いして磨いたら完成です。
※酸洗いについて/ロウ付け部等、地金の品位が低い部分から酸に溶け出して行きますので、酸洗いにかける時間は物によりますが長くても20分位にして下さい。一見綺麗になっていない様な気がしても歯ブラシと重曹で洗うと良くなったりします。若しくはもう一度火にかけて地金が温まった状態で希硫酸にジュッと浸けても良いのですが、結構揮発しますので「ここは外か!」という位換気をしっかりする様に気を付けて下さい。
画像をクリック、またはこちらからご購入頂けます。
ではまた。
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