こんにちは彫金でごはんを食べているCREERです。前回の記事が分かり辛いわ〜・・・というご意見を頂きまして、何だか順番が逆行してしまい申し訳無いのですが、今日はロウ付けの方法の中でも基本中の基本、「置きロウ」で作るシンプルでモードなリングの作り方を書かせて頂きたいと思います。
前回と重複する記述もありますが、ご了承下さい。
ロウ付けに必要な道具
ロウ付けに必要な物は前回も書かせて頂きましたが、ロウ、フラックス、金冠ばさみの他にピンセットとロウ付け台も必要です。こちらのマグネシムろう付け台は柔らかいので、ピン等差してモチーフを固定するのに便利です。他にも色々な種類がありますよ。耐火レンガでも大丈夫ですが、レンガの耐久温度と作業温度の釣り合いが取れているか確認して下さいね。
私はこの下に石膏ボードも敷き、前方には防炎の為にステンレスの板も固定しています。
バーナー。ロウ付け作業はこれが無いとどうにもなりません。私はエアーの供給なしで使えるタイプのバーナーを使用していますが、繊細な火力調整が出来るふいごの方が好きです。一般の方はトーチで十分ですよ。ペンタイプのバーナーもあります。
ロウの切り方
金冠ばさみでロウを1mm幅位に細長く切ります。この様にくるくるっと丸まってしまうので、
ラウンドノーズプライヤー(挟む部分が円錐形になった物)を差し込み、ある程度丸まりを取ってから
ヤットコで伸ばします。因みにこれは爪留めヤットコ。私は目の前にこれらの道具があるので使っていますが、要は丸まってしまった物を真っ直ぐに戻せればいいので、その用途を果たせれば何でも構いません。
ビニール袋の中で切っていきます。
ロウは接合部全体に薄く流れ込んで行けば良いので、あまり大きくは切らず、こんな感じの落としてしまったらもう何処に行ったか分からない位の大きさに切って下さいね(基本0.5mm~1mm)。
置きロウで作るシンプルなリング
では作って行きましょう。
必要な長さに切った角線を用意します。今回は私の人差指に合わせ13号、後でテクスチャーを付けてサイズが大きくなってしまう事を考え合わせて12号の長さに切ります。
※リングサイズの計算の仕方/(リングサイズ直径+板の厚さ)×3.14
12号の直径は16²/₃、この板の厚さは2mmなので(16.67+2)×3.14=58.62、となるので58.6mmに切りますよ。
※リングゲージ、サイズ棒はメーカーによってはかなりいい加減な物がありますので、専門店、もしくはメーカー(日本製かどうか)を必ず確認して購入する事をお勧めします。
角線の断面。他にもフラットな板や丸線、三角線や装飾の入ったデザイン線等、色々な種類が彫金専門店にあります。お店に行けない場合はネットショップをしている所も結構ありますので、お好みの物を選んで使ってみて下さい。
両端にヤスリがけしてフラットにしたらなまします。”なまし”とは火を入れて地金を柔らかくする事です。
この位の色になるまで全体に火を入れます。銀のなましは”ピンク色”が目安と言われていますが、個人的にはこれはピンクというより薄いオレンジだろう・・・と思っております。これを超えると一気に溶けますので気を付けて下さいね。因みに真鍮は真っ赤になるまでなまして下さい。
水に入れて冷ましたら時間が経てば経つほど再び地金が硬くなって行きますので、直ぐ成形に入ります。木槌で両端を叩きながらリング状にして行きますよ。木台と言われる物の上での作業になりますが、ある程度の柔らかさと厚みのある板の上であれば何でも良いと思います。
途中で地金が硬くなって作業し辛くなってきたな・・・と思ったらなまし直して下さい。
両端が隙間無くぴったり合う様にしましょう。
リングのフラックスの付け方を書こうと思ったら写真を撮るのを忘れたので、別の時に撮った写真で許して下さいごめんなさい。
リングに使用するフラックスの硬さは水分多めで水っぽくします。私はあまり幅の無いリングであれば、この様にスライドさせて塗っていますよ。幅のあるリングを作る時は両端を合わせてすっかり閉じた状態で、水っぽいフラックスをロウ付けしたい部分に塗ります。水っぽくする理由は、フラックスが閉じた継ぎ目から毛細管現象で中に入り込んで行く様にする為です。フラックスが大幅にはみ出した場合は、火を入れた時にそこにロウが溶け広がってしまいますので、洗って塗り直すか、はみ出した部分を拭き取って下さい。
このままロウを置いて火を入れるとフラックスが乾く瞬間にロウが弾かれて飛んだりするので、一度サッと火を当ててフラックスを半乾きにしてからリングの内側にロウを置きます。ロウを置く前に火を当てた時、結晶化したフラックスが全く視認出来なければフラックスが足りない恐れがあるのでもう一度塗り直しましょう。
※リングの内側にロウを置く理由/溶かした後、ロウを置いた跡が残る為。
このロウ付けしたい部分にロウを置いて溶接する事を読んで字の如く 置きロウ と言います。最もノーマルで一般的なロウ付け方法になります
これは細いリングなのでロウ一つで良いですが、幅のあるリングを作る場合は小さいロウを2〜3箇所に分けて乗せるといいですよ。
因みに私がここで使用しているロウは2分ロウですが、2分は銀の含有が多い分伸縮性に乏しい為、リングの様にロウ付け後成形が必要な物に向いているとは断言出来ません。慣れれば問題無いのですが、成形途中にパキッとロウ付け部が割れる事があるからです。ですので、オススメは5分ロウ。一般的に使われるのも5分になると思います。
ロウの種類については前回の記事で書いていますのでご参照下さいね。
先ず遠くから全体に火を当てて均等に温度を上げます。この時火を近付け過ぎて温度を偏らせたり、強い火を当ててロウを飛ばさない様にしましょう。全体の温度が均等に上がったな〜ある程度高温になったな〜と思ったらロウに火を当てます。左右の継ぎ目の温度が均等になる様に丁度継ぎ目の中心に火を当ててロウを溶かして下さい。
表にロウが流れているかも確認しましょう。ロウがはみ出さず線状に走っていれば成功です。
この継ぎ目をヤスリをかけて消します。
羽子板の中目と油目。
裏側の継ぎ目も消します。
甲丸という名称のヤスリ。これも中目と油目を使います。
上下にもヤスリをかけてガタつきを取ります。
酸洗いしたら荒らし槌で上下のみテクスチャーを付けます。
正面に金属めくれが出来ますので、それをやすりで落として滑らかにします。
鏡面に仕上げたい部分に耐水ペーパー(800〜1500)をかけた後リューターをかけ、ピカール等研磨剤で磨いたら完成です。
すっきりしたデイリーユースのリングが出来ました。こちらは記事の為に作った非売品です。
テクスチャーを入れず、全て鏡面に仕上げても綺麗だと思います。
同じ物を数本作って重ね付けもいいと思いますよ。
お好きな地金でシンプルなリング、是非お試し下さい。
ではまた。
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