カバンサイト。なにやら聞きなれない石コロではございます。
1960年代にアメリカのオレゴン州で発見された鉱物で、Calcium(カルシウム)、Vanadium(バナジウム)、Silicon(珪素)で構成されることから、『CavanSite』と、命名されました。ちなみに和名はカバンシ石(CavanSi石)。まぁそのまんまです。フライパンで焼くケーキだからパンケーキってくらい安易です。でも日本ではホットケーキと呼ばれる。あったかいケーキだからホットケーキ。まぁ、どっちでもいい。間違ってはいない。つか名前など、どうだっていい。キラキラネームでもいい!たくましく育ってほしい!
と、まぁ、ハナシが逸れましたが、カバンサイトは一般的には鑑賞用で、原石でも様々な状態があり、加工せずとも見ているだけで愉しめるステキ鉱物なのでございます。
コンペイトウの様な球体結晶から放射状の結晶が見られる雲母つきの結晶
母岩と雲母で形成された集合結晶
大きく開いた放射状の結晶
宝飾品用にカットされることはあまりなく、ごくまれにカットされた製品がちょいちょいマニアックな石屋さんに置いていることもございますが、デパート等の宝飾店で取り扱われることは皆無です。その主たる理由は、とにかく脆く、崩れやすく、加工中に割れてしまうことも多くあるためです。日常的にカバンサイトを加工しているワタクシでさえ、5個に1個は失敗する。つまり、商売的に考えるとあまりにも仕入れに対する歩留まりが悪い上に、リング等に商品化できたとしても、身に着けている方がちょっとぶつけちゃったりなんかしたら、壊れる危険性をはらむわけです。
そんな品質のブツを量販店で扱えるハズもないので、マニア向けの鑑賞用という位置づけになっていることが多いのです。
ちょっとしたアレですぐにコナゴナ
しかし、上手に加工さえできれば、深いブルーの放射状の結晶が見られる大変美しい鉱物であるというのは紛れもない事実。石屋の端くれであるワタクシは通常のルースにカットして、『壊れやすいですよ~、気を付けてくださいね~』とか言いつつアクセサリーに加工し、販売していたものですが、やはりどうにかして、強度をもたせてこの美しさをお客さんに楽しんでもらいたいっ!欠けたり割れたりしたら悲しいっ!犬派か猫派かと問われれば魚類が好きっ!(関係ない)タコヤキは出汁で食べたいっ!(もっと関係ない)ってことで、ダブレット石に加工する方法を思いつきました。
カットされたカバンサイト
カバンサイトをカットする
ダブレット石とは、いわゆる『貼り合わせ石』で、種類の異なる2つの石を貼り合わせることで、強度の高めたり、単純に美しさをアップする石の加工技法。
ボルダーオパールや、アンモライトなんかが有名ですね。それをカバンサイトでやってみよう、という試みです。
今回用意したのはカバンサイト原石、水晶のカボションカット石。カバンサイト原石は同業のモリタのユカちんが卸してくれましたよ。ありがとう!零細個人事業者は助け合っていかなきゃいけまへん。
リューターにカッティングディスクを装着し、低速で結晶面を平らにします。平面にならす、というと簡単そうに聞こえるかもしれませんが、なにしろ脆く、そして壊れやすいガラスの10代のハートのようなカバンサイトちゃんですから、ひたすら慎重にスライスします。
2つの中央点から結晶が伸びたカバンサイト。
この時点では多少いびつでも構いません、ここで下手に形を整えようとすると、死にます。即死です。仕入れがパーです。
カバンサイトの形をザックリ整えたら、水晶もカットします。このままじゃダメなの?とか言われそうでございますが、市販品は大きく見せる為にダブル・カボッション的なテイで研磨されていることも多く、磨きも甘いので、いじります。
具体的な問題点は底面がフラットではないというトコロ。底面をおなじくリューターにカッティングディスクを装着し、研磨します。
カバンサイトと水晶の接触面がピッタリと合うように研磨しました。ちょっと重ねてみて、グラついたり隙間があるようであれば調整します。
サンドペーパー、400番、600番、800番、1000番、1200番。1500番、2000番、2500番、3000番と丁寧に研磨してゆきます。平面部分を重点的に研磨するので、平らなモノの上にサンドペーパーを広げ、石を押し付けるように磨きを入れていきましょう。
磨きあがりです。
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樹脂で結合する
このままアクセサリーの金属枠に覆輪しても勿論使えますが、さらなる強度アップのため樹脂結合します。
使用する樹脂材はGM-9050。二種混合タイプの樹脂で硬化時間は1日~2日。気泡が入りづらく、経年劣化による黄化も少ないブツです。
樹脂でカバンサイトと水晶を貼り合わせ、セロファンで固定して、樹脂の硬化を待ちます。季節にもよりますが、わたしは3日間放置します。
樹脂が完全に浸透し硬化したら、リューター等で底面のカバンサイトの形を整え、サンドペーパーで磨きを入れたら、カバンサイトのダブレット石の完成です!
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アクセサリーへの加工
造形したシルバーのパーツ等にカバンサイトをいれ、覆輪で固定します。強度を保つため、シルバーのパーツは裏抜きしません。
石を固定します。
リングも同様。
そんなこんなで、Canecryオリジナルのカバンサイトアクセサリーが完成します!
カバンサイトのネックレス [ショップページ]
カバンサイトのリング [ショップページ]
如何でしたでしょうか!ちょっとした工夫や、時間をかけることによって、脆い鉱物でも、実用に耐えるアクセサリーになります。
それでは良いハンドメイドライフを!
ロミ子でしたん~!
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