覆輪の作り方(地金メーキング)

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覆輪とは?

覆輪(ふくりん)ってのは、装飾品に宝石や天然石なんかを石留めする為の石枠って感じの部分の事です。

装飾品に石留めをする方法としては、覆輪で石を留める方法が覆輪留め、爪枠で石を留める方法が爪留め、地金に直接埋め込むように石を留める方法には様々な技法があるんですが、広義では彫留め、真珠のような丸い珠を石留めする場合は接着剤なんかを使う事もありますが、ジュエリーの場合は耐久性や宝石の保護も兼ねた石留めが求められるので基本的には覆輪&爪&彫留めのいずれかの方法で石を留めます。

いろいろな方法で製作できますが、今回のは比較的に幅広くアレンジが可能な地金からのメーキング方法のひとつで、覆輪部分の高さや石枠と中座のポジション調整が可能だから覆輪を使った指輪の製作とかにも使えます。
もっとも簡単な地金メーキングの覆輪製作方法に比べると製作する工程が少し多く手間が掛かるんだけど、こっちの方が使い勝手がいいから、こっちでいいじゃん。

今回はシルバー(SILVER.950)を使った覆輪の製作工程を紹介しますね。

 

必要な設備や道具

ローラー、バーナー、地金用のヤスリ粗目と油目、リューター、ペーパーマンドレール、ペーパー500番と1000番、銀地金、銀ロウ、フラックス、ヤットコ。

初めての地金メーキングで覆輪を作る人は少ないと思うので、ある程度の知識や経験があると思いますが、ローラーとガスバーナーとリューターの3点は本格的なものを導入しようと思うと大変ですから、逆に覆輪を作りたいと思うくらいであれば、ローラーの代わりに金床やレールアンピルにカラカミ鎚みたいな金鎚を使ったり、ガスバーナーも簡易的なボンベ式のタイプ、リューターも程々のタイプで大丈夫です。

 

作業工程

銀の角線(画像は6mm程度の角線)を用意し、それをバーナーで加熱~水で急冷して軟らかく「なまし」、そこから覆輪用の薄い板状の地金を製作していきますよ。
ちゅ~ても覆輪製作用の地金を毎回用意するのは手間なので、適当に余分を作っておくのが楽だし、ちょっと賢い感じだったりします。

 

いきなり端折って悪いけど地金のなまし等の工程は省略しますが、覆輪の外側になる石枠用のものと内側になる中座用(石座用)の2種類を準備しちゃいたいので、お好みの感じの厚みと幅になるようにローラーを使って薄く延ばします。
厚みや幅は好みや製作するジュエリーのデザインによるものの1.2mm前後と0.8mm前後の2パターンの厚みが使い勝手が良くて、薄い方が石枠で厚みのある方が中座になりますよ。

 

まず、石のサイズや形状に合わせて覆輪の石枠部分となる外側を製作しちゃいます。
先細ヤットコをカスタマイズした何か分かんないけど使い勝手がいい、お気に入りのヤットコ、そんなヤットコを使って石の形に合わせて丸めていきますが、作り慣れちゃうと石に合わせなくても何となくの勘で製作できちゃうように進化しちゃうかも。

 

適当な感じに形を合わせながら、ここだ!って重なり合う部分で真っ直ぐに切断し、その切断面をピッタリに合わせてロウ付け(溶接)します。
この時にピタッと合ってなくて隙間、或いはズレなんかがあると致命的、ま、この時点であれば作り直した方が遥かに早くて出来映えが良くなるから、いちいち真剣に丁寧にやるんだよ。

 

銀ロウは、融点の高い順に3分、5分、7分、早ロウって感じの種類がありますが、ま、殆どの場合、5分ロウで大丈夫っす。
このロウ付け作業で上手く銀ロウが流れないのは、バーナーの火力が強過ぎたかロウ材ばかりに熱を加え過ぎたかでロウ材の表面が炭化した枯れた状態になってしまった可能性が高くて、そん次にフラックスっていう誘導剤がロウ付け箇所に塗れていないか、そもそもロウ付けする箇所の隙間があるかのどれかなんですよね・・・

 

形は後から修正できるのでロウ付け箇所の切断面をピッタリ合わせてロウ付けする事がポイント、ここ重要っすよ。
ちゅ~ような感じで何度も同じ事を繰り返し書きますが、ロウ付けはなるべく隙間がない状態、毛細管現象で液体化したロウ材が流れ込む事で溶着する訳なので、ピタッと合わせる、合うようにしてからロウ付けして欲しいのは、多くの方がロウ付け作業で苦戦しちゃうからなのです。

 

そうしてロウ付けした覆輪(石枠)部分の形を表から見ても裏から見ても同じになるように整え、ピタッと石の形に合わせます。
次に製作した覆輪の石枠の内側に合わせる感じで同じように覆輪の中座となる石が乗っかる部分を製作していくのですが、先に作った外側の石枠部分に合わせて作っていく事になるから、その石枠部分が不出来だと最終的に微妙な感じになっちゃうんだよ。

 

製作作業そのものは先に製作した覆輪の外側、石枠部分と同じなので省略しちゃいますね。
デザインによって変えますが、覆輪の外側となる石枠部分は石を留める事が前提なので無駄に厚みを持たせません。
それに対して覆輪の内側、石の乗っかる中座部分は十分な光抜きの効果が出せる事は前提になるものの石の安定感を考慮して気持ち厚さを持たせて製作します。
外側の石枠部分は、完成時「0.6mm」くらいなのに対して内側の中座部分は「0.8mm」程度を目安にすると良い感じになりますよ。

 

次に最初に作った方の覆輪の外側になる石枠の内側に後で作った中座パーツをピッチピチに嵌め込みます。
ピッチピチ、もう木槌で叩いて入れるくらいでないと隙間が生じるし、でも逆にきつ過ぎると先に作った外側の石枠のロウ付け箇所が後から見えてきちゃうから、外側になる石枠の内側と内側になる中座の外側を仕上げながらジャストサイズに調整しちゃってね。

 

このタイプの覆輪は、後から作った内側に嵌め込む中座の嵌め込み具合で石の高さに合わせた石枠の深さが調整できるのがメリットでして、もし高さのある石を留める場合だったら中座部分は浅く嵌め込み、逆に高さのない薄い石の場合は深く嵌め込む事でベストな感じ、ジャストな感じに調整できちゃうんですよ。
ちなみに先に作った石枠のロウ付け箇所と後から作った中座のロウ付け箇所は同じ位置に揃えておき、さらに以降の工程でロウ付け箇所となる部分にロウ目を合わせておくのがポイントなんだよ。

 

ちゅ~ようなポイントを踏まえながら先に作った外側と後から作った内側になるパーツをいい感じのポイントに嵌め込んでロウ付けをしたら、ここから先は形を整えながら磨いていく工程に入るのです。
覆輪を作る作業って地味なんだけど基本的な技術の多くが含まれているので、いろいろと改善点や修正点が分かってきて、そういう事を考えたりしながら作り続けているとやがて無心、もう何にも考えてないっていうか何か考えてるんだろうけど覚えてない感じの境地に達して楽しいんだよ。

 

粗い目のヤスリで形を整えたら細かい目のヤスリで粗い目のヤスリのキズを取り、そんで粗目のペーパーで細かいヤスリのキズを取り、さらに細かい目のペーパーで粗目のペーパーのキズを取り・・・って感じで、ともかく今やっている作業って前にやった作業のキズを取っているだけなので、前の前の工程で残ってしまったキズなんかがあると前の工程に戻ってやり直す事になるので、そりゃ~丁寧にやるようになりますよね・・・
覆輪とか地金とかジュエリーとかに関わらず、今やっている事が重要なんだなぁ~って思うようになった?

 

石を置いてみた感じ。
シンプルな覆輪ペンダント等なら、必要な厚さで最初から製作すれば丸環やバチカンをロウ付けして完成となりますが、指輪にする場合なんかはリングに合わせて最終調整が必要なので、この時点では正確な高さは分からないので十分な余裕をみて作った方がいいんだけど、高さが出る程に地味に大変さが増しちゃうんだよ。

ある意味、とても地味なのにどうしてなかなか奥が深い感じで覆輪を制するものは何って訳ではないんだけど、こうしたシンプルな基本的なところに何かがあると思います。

地金メーキングはワックスメーキングと違った楽しみがあり、地金メーキングならではの作風とかテイスト的な感じが出るので、ノコで切る、ヤスリで削る、ロウ付けする、仕上げる的な各ポイントにハードルがあって、それを乗り越えた先にも次のハードルがあって、永遠に続くな、これ・・・ってところが素晴らしい、ビバ。

ちゅ~ような感じで、ち~ゆ~。

ΘεΘ

 

 

 

 

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Ijeluna onota
ち~ゆ~国である「Ijeluna:ΘεΘ」と「nekogurma:ΦωΦ」さんはジュエリーを製作したり宝石をコレクションしたり販売したり眺めたり何かしらしているんだよ。 http://shop-nekoguruma.com/