ロウ付け作業で作る、エレガントなピアス [彫金]

彫金道具

彫金をするにあたって必ずと言っていいほど必要な作業がロウ付けです。

ロウとは、パーツとパーツをくっつける金属で出来た接着剤の様な物だと思って頂ければいいかと思います。ロウの種類は銀ロウ、金ロウ、P(またはPt)ロウ、ホワイトロウ等があり、それぞれのロウ材に色々な種類があります。使用する地金の品位やデザインに合わせて選びましょう。

ここでは最も使う頻度が高い銀ロウについて書かせて頂きます。銀ロウの成分は銀+真鍮(銅+亜鉛)等の合金。メーカーによってはカドミウムやニッケル、錫、リチウムを混ぜている所もあるみたいです。一応JIS規格もあります。

銀ロウを使ってロウ付け作業をしてみよう

私が使用しているコモキンさんのものはこのような状態で入っています。

銀ロウを使ってロウ付け作業をしてみよう

ロウ材は種類によって融点と色味が変わります。色味の変化の理由は銀の含有が減り、融点を下げる為に使用する金属(真鍮)の量が増える為で、黄味がかった色になっていきます。

地金を直接加工する際に一般的に使われるSV950(銀95%+銅等5%)の融点はおよそ930℃、これと温度差があればある程早くロウが溶ける訳ですが、溶ければ何でもいい訳ではありません。溶けやすい=弱いという強度の問題と、銀の含有が少ない為ロウ目(継ぎ目)が目立つという問題点があります。

私が居た工房では最初から”銀は2分、真鍮は5分縛り”だった為、現在も私は2分(にぶ)ロウをメインに使用していますが、一般的に使用されるのは5分(ごぶ)ロウだと思います。

えーと・・すいません、下の銀ロウの仕様を見て、早ロウと9分ロウは銀の含有が同じなのに何故融点が違うの?ていうか、9って何に使うの??とか、7分より銀の含有が少ない9分の方が融点が高いのは何故?とか気になる人居るかな・・・とか思ったんですが、多分キリが無いので先に進みます・・・・。

※この作業温度や銀の含有量はあくまでコモキンさんのものです。メーカーによって銀の含有量、融点が微妙に異なりますので、そこの仕様を確認して使用して下さいね。

銀ロウを使ってロウ付け作業をしてみよう

金冠バサミでロウを切ります。ビニール袋の中で切るとロウが飛び散らずに切れますよ。
銀ロウを使ってロウ付け作業をしてみよう

金冠ばさみ 110mm 直刃

新品価格
¥1,296から
(2017/3/16 17:17時点)

見た目ではロウの種類の区別がつかないので、入れ物を分けて使いましょう。

銀ロウを使ってロウ付け作業をしてみよう

粉、細長いもの、極小のもの、少し大きめのもの等、色々な形、大きさに分けて切っておくと便利です。一番使用頻度が高いのは0.5mm〜1mm位かな。ロウ付けする箇所によってはもっと小さい方が良い事もよくあります。粉は細かいロウ付け部やス埋め、ヤスリでは取れないけれどそれ程深くも大きくもない傷を埋めるのに使います。後ほど写真付きで説明しますね。

銀ロウを使ってロウ付け作業をしてみよう

必ず必要なフラックス。酸化防止の為に使用します。これを使わずロウ付けしようとすると地金に酸化膜が出来、ロウが溶けずに黒っぽく固まった状態で地金にこびりついてしまいます。

フラックスにも液体、ペースト等種類があり、ホワイトとブルーを混ぜて使う方もおられるようですが、私は普通に一種類だけで使っています。こちらはメーカーの仕様では”粉のままでも使える”と書いてありますが粉だと散ってしまうので、水で薄めた方がいいと思います。

これを何か蓋の出来る容器に移して使います(揮発するので蓋は必要です)。私は懐かしのフィルムケースを使用していますが、他だと・・・ジャムの瓶とか良いかな?

銀ロウを使ってロウ付け作業をしてみよう

筆で塗ったり、針の様な物を使う方もおられますが、私はこれでフラックスを塗っています。太い真鍮線の先端を薄く叩いた物で、スパチュラの様に使います。

硬さは好みや癖、何処に使うかもあると思いますが(多分推奨は水の様にサラサラ)、色々試した結果、個人的には最初に先生に習った”デンプン糊よりちょい緩い位の硬さ”が一番やり易いです。返した時に、撓むけど固まりでは落ちない位の硬さにして、それを少しだけ掬い、先っぽでちょんちょんとロウ付け部に付けてます。ただ、これもメインにしている硬さ、というだけで、用途によって濃度は替えますよ。

銀ロウを使ってロウ付け作業をしてみよう

では”ス”及び傷埋めの例です。これはわざと付けた傷ですが、これを先程の粉状のロウを使って消して行きます。

銀ロウを使ってロウ付け作業をしてみよう

用意するのは母材と同じ品位の銀の削りかす(この場合はSV950)と粉末のロウ。

※スや傷埋めをする場合に使用するロウ材は通常の”パーツとパーツをくっつける”という用途とは異なる為、出来るだけ融点が地金に近い物を選ぶ事をお勧めします。ただ、やはり2分は難しいと思いますので、3分位を使ってみて下さい。

銀ロウを使ってロウ付け作業をしてみよう

これを混ぜ合わせます。

銀ロウを使ってロウ付け作業をしてみよう

傷の上に、フラックス→混ぜ合わせた粉末→フラックスの順番で乗せます。粉の量は傷より大きめ、こんもり盛り上がる位にして下さい。

銀ロウを使ってロウ付け作業をしてみよう

溶かします。いきなり強い火を当てると粉が吹き飛びますので気を付けて下さい。火の当て方は全体を温め、温度が均等に上がってきたな〜と思ったらロウ付け部に細い火を当てるという様にすると上手くいくかな、と思います。

銀ロウを使ってロウ付け作業をしてみよう

ざっとヤスリをかけた所。傷が消えました。この後酸洗いして磨けば全く分からなくなります。

銀ロウを使ってロウ付け作業をしてみよう

次はロウ付けを多用するピアスの製作実例です。必要なパーツを用意。

銀ロウを使ってロウ付け作業をしてみよう

チェーンをモチーフに沿わせてセット。

銀ロウを使ってロウ付け作業をしてみよう

フラックスを塗り、ロウを乗せます。ロウを乗せた跡がうっすら残ったりするので、必ず裏面に乗せて下さい(リングなら内側)。

※フラックスを塗る位置について/接合する片面だけでなく、両面、ロウ付けしたい場所に塗り残しの無い様に塗って下さい。

銀ロウを使ってロウ付け作業をしてみよう

付きました。ロウが継ぎ目に流れて行く事を「ロウが走る」と言いますが、上手く走ったかどうかは火を当てている時にロウ目がキラキラッと銀色に光るので分かると思います。火の当て方は先程書いた様に「全体を温めてからロウ付けしたい部分に細く火を当てる」という順にして下さい。

※接合したい部分への火の当て方/接合部に火を当てる時は火が片寄らない様に、継ぎ目の中央に当てて下さい。火が片寄ると温度が高い方にロウが流れます。

銀ロウを使ってロウ付け作業をしてみよう

強度を上げる為、デザインに影響しない程度に接着面は増やしたい所。この輪カンの位置的に一点のみでロウ付けするのは心許ないので、下げる輪カンに対して左右に当たるチェーンにロウ付けします。これでこのパーツはしっかり固定されました。

銀ロウを使ってロウ付け作業をしてみよう

もう一種類輪カンを付けて表から見た所。ロウのはみ出しは全く見られません。

銀ロウを使ってロウ付け作業をしてみよう

この輪カンを裏面に付ける理由は先程と同じ、接着面を増やし、強度を上げる為です。

銀ロウを使ってロウ付け作業をしてみよう

オーバーレイの作品を作ってみよう

下に下げるパーツを作って行きます。ここで使用する輪カンはやはりロウ付け面を増やす為に少しだけ交差させます。

銀ロウを使ってロウ付け作業をしてみよう

ロウ付け面を増やしたいので、繋ぐパーツの方も接合面の角を少し落とします。

銀ロウを使ってロウ付け作業をしてみよう

付きました。これもロウは裏から差して下さいね。

銀ロウを使ってロウ付け作業をしてみよう

こんな感じに。

銀ロウを使ってロウ付け作業をしてみよう

チェーンも繋げて全部の輪カンをロウ付け。

銀ロウを使ってロウ付け作業をしてみよう

コイン枠や石枠を作ろう

輪カンをロウ付けする時の注意点。ピンセットで持つ時は左の図の様に持って下さい。右の持ち方だと輪カンの形が崩れます。

銀ロウを使ってロウ付け作業をしてみよう

こういうロウ付けが多い物は酸洗い後しっかり検品する必要があります。付けたつもりでいても、フラックスで軽く留まっているだけだったりする事があるので、一度酸洗いしてからちょっと引っ張ってみたりしながら確認する事をお勧めします。

これで一箇所だけ留まっていなかったりすると精神的ダメージがそこそこあるので、覚悟しながら検品して下さいね。

銀ロウを使ってロウ付け作業をしてみよう

燻して磨いたら完成です。

私はこちらの場合全て2分ロウで作業していますが、同じロウで作業を続けると回数が増える毎に前に付けた部分が外れたり、ロウが溶け広がったりするリスクがあります。それを避ける為にロウ付け毎に融点の低いロウに変えて行くという方法もあります(3分→5分→7分等)。

何れにしてもロウ付け作業は出来るだけ少ない回数で完了させたいので、纏めて付けられる物は一気に付けてしまいましょう。

銀ロウを使ってロウ付け作業をしてみよう

覆輪を使ったシルバーリングを作ろう(2)

銀ロウを使ってロウ付け作業をしてみよう

銀ロウを使ってロウ付け作業をしてみよう

銀ロウを使ってロウ付け作業をしてみよう

画像をクリック、またはこちらからご購入頂けます。

ロウ付けが出来る様になるとデザインの幅が一気に広がりますので、先ずは融点の低い物からでも試してみては如何でしょうか。

槌目のシンプルピアスの作り方

糸ノコの使い方とシンプルピアス

 

 

The following two tabs change content below.
CREER
清潔感、身につけた時の美しさ、女性らしさに重きを置き、「身につけるアート」としてお楽しみ頂けるジュエリー、アクセサリーを地金から丁寧に制作しています。https://creer-acc.stores.jp/
[ ロウ付け作業で作る、エレガントなピアス [彫金] ]彫金/ロストワックス2017/03/16 17:27